頭皮は体の中でもトラブルが起こりやすい部位です。
髪の毛が生えていてケアがしにくい上、皮脂が分泌されやすいためです。
頭皮トラブルにはさまざまな種類がありますが、中でも多くの人が悩んでいるのが脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)です。
脂漏性皮膚炎は一度発症すると慢性化しやすく、自然完治が難しいのです。
では脂漏性皮膚炎になってしまった場合、どうすればいいのでしょうか?
脂漏性皮膚炎になってしまう原因とともに、考えていきましょう。
その症状はもしかしたら脂漏性皮膚炎の初期かもしれません。
思い当たる場合は、早めに対策をとることが大切です。
目次
脂漏性皮膚炎とは?頭皮以外にもできる?
脂漏性皮膚炎とは、頭皮を中心にできる皮膚炎です。
症状としては、皮膚が赤くなり脂っぽい細かい皮がこびりついた様な状態に。
ひどくなると頭全体がかさぶたに覆われたような状態になることもあります。
慢性化することが多く、一度発症すると自然に治るのは難しいと言われています。
脂漏性皮膚炎は頭皮を中心にできる皮膚炎ですが、頭皮以外にも髪の毛の生え際や首周り、前胸部、上背部、わきの下、足の付け根などにもできることがあります。
これらはすべて、脂漏部位といわれる皮脂の分泌が盛んな部位なのです。
脂漏性皮膚炎は3か月未満の乳児によく見られ、いわゆる乳児湿疹と呼ばれる状態です。
他にも思春期や40~60代にとくに多いと言われていましたが、近年は世代を問わず多くの人に見られるようになっています。
頭皮は自分で見えないのでどうしても気づきにくいですが、頭皮に脂漏性皮膚炎ができていると、髪の毛の生え際やおでこにまで広がってくることがあります。
もし髪の毛の生え際が赤くなり、乾燥したように皮膚がカサカサした状態になっていれば、脂漏性皮膚炎が疑われます。
中にはかゆみを伴わない場合もあり、フケによって気づくこともあるようです。
多くの人が悩んでいる原因は、何といってもその治りにくさにあります。
一度で発症してしまえば慢性化してしまい、治ったと思ってもまた悪化を繰り返すことが多いのです。
脂漏性皮膚炎の原因
脂漏性皮膚炎の原因に関しては、実はまだ詳細は明確になっていません。
詳細はわかっていませんが、皮膚が弱い・皮脂が出やすいなどの遺伝的要因、アレルギーやかぶれなどの環境的要因、不規則な生活や精神的ストレスなどのさまざまな原因が重なってできる多因子疾患と考えられています。
マラセチア菌
さまざまな原因が考えられる脂漏性皮膚炎ですが、近年マラセチア菌というカビの一種が発症に大きく関与していると明らかになりました。
マラセチア菌というのは皮膚に常在している真菌で、皮脂を栄養源として増殖します。
そのため皮脂の分泌が盛んな頭皮では増殖する傾向にあります。
頭皮は髪の毛があるため蒸れやすく、一度マラセチア菌が増殖傾向になると、一気に増えてしまうのです。
マラセチア菌の増殖自体が脂漏性皮膚炎の原因になるわけではなく、マラセチア菌が皮脂を分解することで生成される物質が頭皮に刺激を与え、炎症やトラブルの原因となると考えられています。
ただしマラセチア菌があるからと言って、すべての人に脂漏性皮膚炎を引き起こすわけではありません。
皮脂の分泌状況だけでなく、頭皮のpH、温度や湿度など、多くの要因が重なってはじめてマラセチア菌が増殖し、発症すると考えられています。
免疫機能に異常がある場合
脂漏性皮膚炎は健康な人でも発症することのある皮膚疾患で、多くの人を悩ませています。
ですが免疫機能に異常がある人は、発症リスクが高くなると考えられています。
とくに
・エイズ(発症している場合)
・アルコール性膵炎
・免疫抑制剤の使用
・抗がん剤の使用
がある場合には、発症しやすくなるようです。
またはっきりと原因はわかっていませんが、パーキンソン病やうつ病などでも健康な人に比べると発症率は高くなっていると言われています。
免疫機能に異常がなくても、疲れがたまって免疫力が落ちている場合にも感染のリスクは高まると考えられます。
その根底にあるのは、頭皮の環境です。
脂漏性皮膚炎にならないためにも、普段から自分の頭皮の状態に目を向けてみましょう。
脂漏性皮膚炎の主な症状
脂漏性皮膚炎の主な症状にはどのようなものがあるのでしょうか?
脂漏性皮膚炎は、一度発症すると慢性化しやすい皮膚疾患です。
そのため同じ人でも、症状は環境によって変わってきます。
生活習慣や食事の内容、ストレスや乾燥、気温などによって、症状が悪化することもあります。
人によっては、夏の汗をかく時期に悪化することもあれば、逆に冬に乾燥する時期にひどくなることもあるのです。
そうかと思えば、知らないうちに自然に改善している場合もあります。
自然完治が難しいと言われるのは、改善してもそれは完治ではなく、環境が変わればまた悪化してくる可能性が高いのです。
症状が軽度な状態
脂漏性皮膚炎は軽度であれば、皮膚に炎症が起こり、かゆみを感じます。
頭皮に発症した場合には見た目にはわかりにくいですが、皮膚は赤くなって皮がカサカサとはがれたような状態になっています。
また乾燥したフケの量が多くなります。
症状が進行した状態
赤みがかった炎症が広範囲にわたって複数現れます。
皮膚全体が赤くなることもあれば、ニキビ状の炎症が複数現れ頭皮がぼこぼこの状態になることもあります。
さらに進行し、頭全体がかさぶた状になってしまうことも少なくありません。
強い痒みだけでなく、傷ができて痛みを感じることやリンパ液が流れ出て黄色いかさぶたができることもあります。
加齢臭のような嫌なニオイが出てくることもあります。
こうなると自然に改善することは難しいため、速やかに皮膚科を受診する必要があります。
最悪の場合、毛根までダメージを受け脱毛が起こってしまいます。
それだけでなく、フケやニオイがあると気になりますよね。
では脂漏性皮膚炎になったらどうすればいいのか、見ていくことにしましょう。
脂漏性皮膚炎になったらどうしたらいい?
頭皮に痒みやニオイを伴う脂漏性皮膚炎、何とかしたいですよね。
では脂漏性皮膚炎になった場合はどうすればいいのでしょうか?
皮膚科に行く
脂漏性皮膚炎が疑われる場合には、まずは一度皮膚科を受診しましょう。
脂漏性皮膚炎は慢性化しやすく、環境の変化で一気に悪化する可能性もあるため、軽度なうちに皮膚科でしっかりと完治をさせるのがベストです。
とくにかゆみを伴う場合には、掻いてしまい悪化する懸念があります。
かゆみは我慢することが難しく、寝ている間に知らず知らず掻いていることもあります。
かゆいだけなら病院を受診する必要はないと考える人も多いと思いますが、とくにかゆみがある場合には早めに受診しましょう。
頭皮は体の中でも過酷な環境にありケアが難しい部位なので、早めの受診をオススメします。
治療としては、主にステロイドの塗り薬により症状を緩和します。
ステロイドを使用して皮膚の炎症がおさまれば、使用頻度を減らしていきます。
薬を使用した場合、顔だと2~3週間、頭皮だと4~6週間程度で症状は治まることが多いようです。
とくに頭皮は皮脂が多い上蒸れやすく、更に薬も塗りにくいため、長引く傾向にあります。
治療期間中は、患部をできるだけ刺激しないように注意しましょう。
とくに患部を掻いてしまうと、傷になってしまいまたかゆみを誘発してしまいます。
そしてまた掻いてしまい状が悪化するという悪循環を繰り返してしまうのです。
注意点としては、ステロイド剤を使用した場合、炎症がましになったからといってすぐに薬をやめてしまうとまた悪化する可能性があるということです。
しっかりと完治させるためにも、薬は自己判断で中止せず、医師の指示通りの期間・指示通りの回数を使用するようにすることが大切です。
生活を見なおす
脂漏性皮膚炎の原因の一つがマラセチア菌です。
マラセチア菌は皮脂が多くなると増殖するため、皮脂が過剰に分泌される原因となる脂っぽい食事やジャンクフードなどを控えるようにしましょう。
同時に新しい頭皮を育てるため、良質なたんぱく質を意識して摂取することも大切です。
何より、バランスの取れた食生活を心がけましょう。
ストレスや睡眠不足が原因でも皮脂の分泌が増えることがあるので、規則正しい生活を送ることも大切です。
頭皮環境を良くする生活を心がけましょう。
脂漏性皮膚炎を改善するためには、皮膚科での治療と同時に、健康的な生活を心がけましょう。
頭皮トラブルを悪化させないために
ストレス社会と言われる現代、脂漏性皮膚炎に限らず頭皮トラブルに悩む人は年々増えていると言われています。
頭皮トラブル用の市販薬も多く販売されているので、皮膚科の受診とともに上手に活用すればいいでしょう。
頭皮トラブルも軽度であれば、市販薬で改善する場合もあります。
必要に応じて薬や皮膚科も活用すればいいですが、何より頭皮トラブルを悪化させないためには、普段の生活から頭皮をいたわることが重要です。
ここでは、頭皮トラブルを悪化させないためのポイントをご紹介しましょう。
正しい洗髪
頭皮トラブルの原因の一つとして、洗髪方法が誤っている可能性があります。
正しい洗髪を身につけることで、頭皮トラブルが解決することもあるほど、頭皮の健康につながります。
それだけでなく、正しい洗髪は髪の毛の健康にも大きな影響を及ぼします。
正しい洗髪はさまざまなメリットがあります。
この機会に、ぜひ正しい洗髪方法を身に付けてください。
まず洗髪の頻度ですが、毎日1回が基本です。
フケに悩んでいる人の中には、洗髪の頻度を減らしたり(逆に増やしたり)、湯シャンと呼ばれるシャンプー剤を使わない洗髪方法を試したりする人も多いようです。
ですが頭皮は皮脂の分泌が多い部位なので、毎日きちんと汚れを洗い流す必要があります。
洗髪の頻度を減らしたりシャンプー剤を使わなかったりすると、余分な皮脂が毛穴に詰まってしまい、それが更に炎症や頭皮トラブルを悪化させる原因になるのです。
フケが気になる場合には、シャンプー剤選びに問題がある場合が多いです。
乾燥が気になる場合には、洗浄力が強すぎる可能性があります。
逆に洗髪後に頭皮がべたついているなら、洗浄力が足りないか洗髪方法が誤っている可能性があります。
頭皮トラブルがある場合は、赤ちゃんやアトピー・敏感肌でも使えるような優しい洗浄力のものを選んだ方がいいでしょう。
石油系の界面活性剤はとくに洗浄力が強く、頭皮に必要な皮脂まで洗い流して乾燥の原因になってしまうことが多いため注意しましょう。
次に正しい洗髪方法についてご紹介します。
洗髪をする時のポイントは、
・乾いた状態でブラッシングをして髪の毛の絡みを取るとともに汚れを浮かす
・38度前後のぬるま湯で洗う
・シャンプー剤をつける前にしっかりとお湯で汚れを落とす
・シャンプー剤はしっかりと泡立ててからつける
・洗い残しがないようにしっかりと洗い流す
・リンスやトリートメント剤は頭皮に付けず毛先を中心に
・洗髪後はドライヤーで乾かす
ということです。
皮脂以外の髪の毛と頭皮の汚れは、ぬるま湯で十分落ちます。
そのためまずしっかりとお湯で汚れを落とすことが重要です。
そうすることで、シャンプー剤を使用する時間をできるだけ短縮できます。
いくら洗浄力の優しいシャンプー剤を使用しても、肌の負担になるということには違いありません。
できるだけ速やかに洗うように心がけましょう。
また頭皮トラブルの原因として、シャンプー剤がきっちり洗い流されておらず頭皮に残っていることが多いようです。
とくに髪の毛が長い場合には、頭皮に直接シャワーが届くように工夫するなどして、しっかりと洗い流すようにしましょう。
頭皮の血行を良くする
頭皮の血行を良くすることで、ターンオーバーが改善され、頭皮トラブルを早く解決する効果が見込めます。
とはいっても頭皮トラブルが起きている状態だと、頭皮を刺激すると逆効果になってしまう可能性があります。
そのため肌に合ったオイルなどを使って、摩擦が起こらないように注意しながらマッサージを行うと効果的です。
頭皮全体を揉みこむようにマッサージした後、頭皮を手で包み込み前後左右に動かします。
頭皮はやわらかい方が血行もよく健康的だということができます。
他にも頭皮の血行を良くする方法として、
・蒸しタオルをする・湯船につかって体を温める
・有酸素運動を取り入れる
なども有効です。
ただしかゆみがある場合には温めることで悪化する可能性もあるので注意しましょう。
温めて血行を良くすると同時に、痒みを感じたらクールダウンするようにすればいいですね。
頭皮が蒸れるのを避ける
皮脂が多く分泌されべたつく部位として顔のTゾーンがあります。
実は頭皮はそのTゾーンの2~3倍もの皮脂腺があると言われています。
頭皮は多くの皮脂腺がある上に、髪の毛が生えているので、蒸れやすく過酷な環境にあるのです。
更に外気の影響を直接受けるため汗をかきやすく、乾燥しやすい、夏には紫外線の影響を受けやすいと、挙げればきりがありませんね。
頭皮トラブルの大敵は、この過酷な環境下で頭皮が蒸れてしまうことです。
蒸れることにより細菌が繁殖しやすくなり、痒みや更には匂いの原因になります。
では頭皮を蒸れさせないためにはどのような対策ができるのでしょうか?
蒸れる大きな原因は、汗です。
汗をかいたら、体だけでなく頭も、優しくタオルでふき取るようにしましょう。
頭皮が痒かったり、フケが出ていたりすると、どうしても髪の毛を束ねてごまかしてしまいがちです。
髪の毛を束ねることで、一時的に痒みがましになった気になるかもしれませんが、実は頭皮はかなり蒸れた状態になってしまうので逆効果です。
髪の毛はきつく束ねるのではなく、できるだけ風通しがいいように工夫をしましょう。
束ねている場合には、時々ほどいて蒸れを解消するようにしましょう。
そして蒸れで気を付けたいのが帽子です。
紫外線対策のためには有効ですが防止の中は蒸れた状態になってしまいます。
帽子を選ぶ際には、なるべく通気性のよいものを選び、被りっぱなしではなく日陰では脱ぐなど蒸れ対策を行いましょう。
頭をさわらない・掻かない
頭皮トラブルの多くはかゆみを伴います。
痒いとどうしても掻いてしまいますよね。
掻くことで更に炎症がひどくなり、痒みが増してしまいます。
それをまた掻くことで、どんどんとトラブルが悪化していくのです。
まずは掻かないことが重要です。
また一度頭皮トラブルになると、気になって痒くなくても頭を触るのが癖になってしまいがちです。
そんな時は、他の事で気を紛らわすなど、できるだけ頭皮を触らないように工夫をしましょう。
とくにかゆみが気になる場合には、かき壊してしまう前に皮膚科を受診することも有効です。
他にも自分でできる対策として、保湿があります。
洗髪後にオイルを頭皮になじませておくだけで、乾燥を防ぐことができかゆみを抑えることができます。
また汗をかいたら速やかにタオルでふき取るようにしましょう。
汗をそのままにしておくことで、蒸れてしまいかゆみが起こりやすくなります。
それでもどうしても痒い場合には、冷やすと効果的です。
タオルを巻いた保冷剤などを痒い部分にあてることで、痒みを和らげることができます。
他にも、洗髪の最後に、少し冷ための水で流すことでもかゆみを抑えることができます。
逆に言えば、ドライヤーなどで温めすぎるとまたかゆみが出てくることもあるので注意しましょう。
気が付かないうちに掻いてしまうことがあるなら、爪を短く切っておくことも有効です。
とくに蒸れが原因の場合には風通しのよい短めの髪型にすることが効果的です。
それ以外にもスタイリング剤をあまり使わなくていいような髪型にすることで、頭皮への負担を軽減する効果が見込めます。
まとめ
慢性化しやすい脂漏性皮膚炎は、できるだけ早く完治させるのが大切です。
頭皮トラブルは、フケやかゆみ、場合によってはニオイまで伴い不快ですよね。
ストレスになる上、見た目にも影響します。
フケがあるとせっかくのオシャレも台無しです。
そしてそれは今だけの問題ではなく、長引くことで将来の薄毛のリスクを高めてしまう可能性もあるので、早急な対策が必要です。
皮膚科・生活改善・頭皮ケア、さまざまな方向からアプローチして、一日でも早く改善しましょう。
頭が蒸れにくい髪型や、スタイリングの方法についてアドバイスをもらうといいですね。